真っ白な雪が一面に積もった。


「……すごい、真っ白!」


イエローは思わず目を輝かせる。足を踏み出すと、ブーツの下でぎゅっと音が鳴った。


「いっぱい積もったなぁ……」


一様に白く染まった景色を見てレッドは呟いた。吐き出す息も白い。だがすぐに、灰色の空に溶けるように消えていった。


「雪だるま作りましょうレッドさん!」


「おー……、気を付けないと転ぶぞ」


嬉しそうに足跡を付けて回るイエローに返す。彼女の頬はもうすでに外気のせいで赤くなっている。
どさり、とすぐ近くで雪が木の枝から落ちる音がした。


「だいじょーぶっ、」


イエローの言葉は妙に途切れ、雪を落とした木に気を取られていたレッドが再び彼女の方を向いたとき、イエローはこちらに頭を向けて仰向けに倒れていた。


「……言ってるそばから!」


慌ててレッドはイエローに駆け寄る。イエローは驚いた表情のまま、肘をついて上半身を起こした。


「大丈夫か?頭打たなかったか?」


「だ、大丈夫です、すみません」


屈んだレッドを、申し訳なさそうにイエローは見上げる。そして、えへへと躊躇いがちに笑みを作った。レッドは小さく溜息をつく。今度は白い息は積もった雪に吸い込まれるように消えていった。


「……ほら」


苦笑を浮かべ、レッドはイエローの両手を取った。イエローは握られるがまま「え?」と首を傾げ、次の瞬間には一気にその場に立ち上がらせられていた。背中や腕についていた雪が、その勢いでぱらぱらと落ちていく。


「あ、ありがとうございます」


ぱちぱちと目を瞬かせながらレッドを見る。手は握られたまま。


「……ピカとチュチュは?」


おもむろにレッドは訊ねた。


「えっ?あ、えーと、たぶんストーブの前で、二人でぬくぬくしてるんじゃないかと……」


手袋ごしに握られた手からは、あまり温度を感じなかった。それでもその感覚に、自然と胸の辺りがどきどきとうるさくなってきたことに、イエローは気付いた。


「ええと、呼んできましょうか?」


どぎまぎと今度はイエローが訊ねる。


「いや、いいよ」


言葉と同時にゆっくりとその手が離される。イエローはレッドの目を見上げた。


「せっかく二人っきりでぬくぬくやってんなら、邪魔しないでやろう」


そう言って、楽しそうにレッドは笑った。つられて、イエローも自然と表情が和らぐのを感じた。


「そうですね」


灰色の空から、再びちらちらと真っ白な雪が降ってくる。また今夜も降るだろうか。もっと積もればいいとイエローは思う。


「雪だるまどっちが先に出来上がるか競争な」


「いいですよっ、負けませんよう」


二人の声は、白い息と一緒に空へ溶けていった。









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07,01,29
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